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工業会の概要

写真が上達するコツ
第8回 もっと Motto! 家族写真を楽しもう!
~簡単魅力アップ!家族写真の撮りかた~

家族全員が一緒に映る「 家族写真 」。一昔前ならテーブルやサイドボードにカメラを置いてセルフタイマーで撮影、なんて光景をよく目にしました。それはそれで楽しい撮影でしたし、もっと魅力的な家族写真にしたいと思えば、お洒落して写真館に行き、プロの写真家に撮ってもらったりしたことでしょう。でも、もっと簡単に楽しく、もっと自由に自然な「 家族写真 」が撮れたらいいのにと思いませんか?  Web 写真上達講座の第8回では、より自由な家族写真の撮りかたと、その楽しみ方をテーマにお送りします。

■ 家族が撮るから自然な笑顔

シャッターを切るために家族の誰かが欠けてしまう写真は、家族写真としてはやはりちょっと寂しいもの。だからカメラにセルフタイマーをセットして、家族全員が映り込んだ写真を撮ることになります。ですが、セルフタイマーでの撮影は、ご存じのようにシャッタータイミングが取りづらかったり、撮られている瞬間の構図もわかりづらかったりと、自由で自然な家族写真を撮るには多少難ありです。もっと魅力的な家族写真を、というわけで、最近はプロの写真家に出張サービスしてもらい、写真館のクオリティで魅力的な家族写真を撮ってもらう家族も増えてきました。良心的で上手なプロであれば、その結果にはきっと満足できるはずですが、もっと日常的に、もっと自然な表情の家族写真をと考えるなら、やはり第三者のいない家族だけの空間で、家族自身の手でシャッターを切りたいものです。最近のデジタルカメラには、手元でシャッターが切れるリモートレリーズがオプションで用意されているものもありますが、ここではちょっと変わった、便利な方法を紹介しましょう。

▼写真1 明るい家族写真を撮ろう
柔らかい陽射しが射し込む窓際で、家族自身の手でシャッターを切って、自然な笑顔の家族写真を撮ろう
 

■ 手元のスマホでシャッターを切ろう

▼写真2 家族写真におすすめのカメラ
今回の撮影で使ったカメラ。コンパクトで軽いので、背面の液晶画面を回転させてレンズと同じ方向に向ければ、自分撮りも簡単にできる。レンズ交換式なので、撮影したい被写体に合せて最適のレンズを選べる
  

● 手元でコントロール

最近のデジタルカメラの一部には、スマートフォンとデジタルカメラを WiFi で連動させてシャッターを切れる製品があります。簡単に説明すると、お使いのスマートフォンをリモコン代わりにして、離れた場所に設置したデジタルカメラのシャッターを切る、というわけです。離れた場所のカメラが映している風景がスマートフォンの画面にリアルタイムに表示されるので、最高のシャッターチャンスを逃さずに写せる大変便利な機能です。このリモート撮影機能を使えば、スマートフォンの画面で構図を逐次確認しながら、撮られる側がシャッターのタイミングを選べることになるので、セルフタイマーではできなかったより自然な表情での撮影ができるはずです。

  
▼写真3 ▼写真4 ▼写真5 撮影例
専用のアプリをスマートフォンにダウンロードして使う。アプリの画面では、絞りやシャッタースピードなどの露出設定の他に、対応しているレンズであればズームも調整できる。ピントを合わせる場所も画面をタッチして指定できる。スマートフォンでデジタルカメラを操作しての撮影に慣れてきたらスマートフォンを隠すようにしよう

 

▼写真6 三脚を使って撮影しているシーン
屋外にも持ち出せるように、軽くて丈夫、さらにコンパクトな三脚を選ぼう

● 三脚を使おう

こうしたリモート撮影において、あると便利な撮影用品といえば、やはり三脚でしょう。大切なデジタルカメラをしっかりと固定できる軽くて丈夫な三脚があれば、テーブルやサイドボードにカメラを置いた撮影よりも自由なアングルが選べ、撮られる側も撮影に集中できます。三脚には用途に合わせてさまざまなサイズと重量の製品があります。載せるカメラの大きさや重さ、撮影する被写体の性質によって三脚は選ばなければなりませんが、コンパクトなミラーレスカメラで使うのであれば、比較的安価で丈夫な中型の三脚で十分でしょう。

▼写真7 クイックシュー
クイックシューがあると、カメラと三脚の取り外しが簡便になる
 

また、三脚を選ぶときのもうひとつのポイントとして、カメラと三脚の取り外しが素早くできるものを選ぶことです。カメラを三脚に固定する「 雲台 」部分に、簡単な操作で取り外しのできるクイックシューがあるものを選ぶと、三脚での撮影と手持ちカメラでの撮影を即座に切り替えられます。

手持ち撮影、三脚撮影と、カメラを簡単に取り外しできるということは、小さなお子さんがいる家族写真撮影では、意外と大切なポイントになるはずです。

 

■ いつもとは違うアングルで撮ってみよう

▼写真8 一脚を使って撮ろう
軽くて堅牢な一脚とコンパクトなデジタルカメラなら女性でも片手で持ち上げられる
 

家族写真というと、ほとんどの方は撮り手の目の高さ、または三脚の高さで撮影します。それが悪いというわけではありませんが、たまには違った視点での撮影にチャレンジしてみませんか?

たとえば……天井から見下ろしたような「 俯瞰 」アングル、とか、床から見上げる「 アオリ 」アングル、などです。こうした人が手持ちで撮影するのでは難しいアングルを実現してくれるのが「 一脚 」です。片手で持てるサイズと重さの一脚にカメラを装着して、前述したスマートフォンでのリモート撮影を使えば、ほぼ真上からの俯瞰撮影や、床に這いつくばらないとできないアオリ撮影も簡単に撮影できます。

こうした俯瞰やアオリアングルで撮影した写真は、人の目の高さで撮ったものより迫力が増します。

 
▼写真9 撮影例
この方法で赤ちゃんと一緒に撮るときは、カメラの近くに音の出るものなど、赤ちゃんお気に入りのオモチャがあると、赤ちゃんの視線をカメラに誘導できる

 

カメラを装着した一脚を手で持って撮影するときは、一脚の脚がフレームインしないように気をつけましょう。また、万が一の事故を防止するためにも、カメラにストラップを付け、一脚の脚と一緒にストラップを握っておくことをおすすめします。

 

■ 積極的に明るく撮ろう

▼写真10 暗くなってしまった失敗例
背景が明るすぎると、自動補正が働いて人物が暗くなってしまうことがある
 

気軽に撮る日常の家族写真をより魅力的に撮りたいと思うのなら、優しい光がたくさん入る窓際で撮りましょう。明るすぎない程度に光りで満ちた写真は、それだけでも優しく綺麗に見えるものです。最近のデジタルカメラは暗い場所でも撮れるほど性能が良くなりましたが、より綺麗に撮るのなら、やはり明るい場所で撮ることをおすすめします。特に小さなお子さんと一緒の家族写真であれば、お子さんが少しくらい動いてもブレないように、速いシャッタースピードで撮る必要があります。そのためにも陽射しの入る窓際で撮るのがベストです。「 だけど、陽射しの入る窓際で撮影すると、人物の顔が暗くなってしまう…… 」と悩んでいるご家族もあるかと思います。そんなときのための、ちょっとしたアドバイスを紹介しましょう。

 
▼写真11 カメラの露出補正を使う
ほとんどのカメラに搭載されている露出補正機能を使って、+方向に明るく露出補正して撮影しよう。露出補正のやりかたはデジタルカメラによって異なるので、必ずマニュアルで確認しよう

デジタルカメラは写している風景に明るい部分が多いと、全体がより平均的な明るさになるようにカメラが自動的に明るさを補正します。撮影場所によっては、この機能がマイナスになってしまうことがあります。特に光の入る窓を背景にして撮影する場合など、被写体よりも背景が明るい場所では、自動補正機能によって人物が暗くなってしまうのです。そういうときは、多くのデジタルカメラに標準的に装備されている「 露出補正 」機能を使いましょう。本番の撮影をする前に、一度テスト撮影して人物の顔が暗いと感じたら、「 露出補正 」を+の方に上げて撮影します。壁や天井が白で、陽射しの入る窓を背景に入れているときなどは、+方向へ1~2程度上げると、人物の顔が明るく撮れます。

 
▼写真12 白飛び警告の表示例
明るすぎて白飛びしてしまった箇所が赤で点滅表示されているところ。初期設定では白飛び警告が非表示設定になっている機種もある。少しくらいの白飛びは気にしないで撮ってみよう
 

こうやって+方向へ露出補正して撮ったとき、カメラによっては液晶画面に白飛びの警告が出ることがあります。白飛び警告とは、明るすぎるために、プリントすると白飛びした箇所だけ紙の地色がそのまま出てしまうことを教えてくれるものです。白飛び警告が画面全体に出ている場合は、+方向への露出補正を少し落として撮影し直します。しかし、少しくらいの白飛び警告はあまり気にしないで撮影しましょう。最近のデジタルカメラは、明るい領域の表現能力が以前と比べて飛躍的に改良されてきているため、少しくらいの白飛び警告が出ても、プリントするとわずかであってもディテールが表現されていたりします。

 

■ 明るく撮るためのアイテムを使おう

▼写真13 レフ板を使って明るく撮ろう
窓から入る陽射しをレフ板の白い面に受け、人物に反射させて使う。レフ板は手で持ったり、椅子やカウチの背で支えて配置するのもよい
 

窓際での撮影で、背景が白飛びしない程度に露出補正しても、やっぱり人物の顔が暗めになってしまう……というときは、窓から入ってくる光を人物に反射させる「 レフ板 」という撮影道具を使ってみましょう。レフ板には表裏が白と銀、または白と黒といった布製のものが一般的に売られています。少人数の家族写真用であれば、白と銀のもので直径が1m前後のものであれば十分でしょう。このレフ板を椅子やカウチに立てかけておいて、窓から入る陽射しをレフ板の白い面に受けて、その反射光が人物に当たるように設置して撮影します。窓から入る陽射しが室内の壁や家具に反射して、室内が明るくなる場所であればレフ板はいらないかもしれませんが、壁や家具に色がついている場合は、その色が人物を染めてしまうことがあります。そういうときも、白いレフ板を使うと太陽光と同じ色の光を反射してくれるので、自然な印象で撮影できます。

 

■ 優しいイメージカットを押えよう

▼写真14 目線を外したイメージカット
明るい陽射しを背景に眠る赤ちゃんを見つめるお母さんの表情を撮ろう。しっかりと表情を収めるために、思い切って寄りのカットを撮るのがおすすめ
 

家族全員がカメラ目線の笑顔の集合写真も良いものですが、たまには目線を外したイメージカットも撮っておきましょう。特に小さなお子さんとの家族写真であれば、ご両親の優しい目線の先にいるのがお子さんという写真は大切でしょう。本稿の制作に協力をいただいた写真家で家族写真撮影術のレッスンプロでもある椎名トモミさんは、「 小さなお子さんとの家族写真は、未来の子供へのプレゼント 」だと話しています。「 成長したお子さんが自分の目でアルバムを観たとき、自分はこんなにも両親から愛されていたんだと感じられるような写真を残してください 」とも。

 

▼写真15 撮影シーン
二人の顔がうまく収まるアングルを探して、カメラを傾けたり高さを変えたりしながらテンポ良くリズミカルに撮っていこう

椎名さんは次のようにも話しています。「 よそ行きのお洒落した写真ではなく、カジュアルな普段着で、いつもの生活が垣間見られるような室内を背景にした写真の方が、より日常的な愛情を感じられるものです 」。

お子さんを見るときのご両親の目や表情に特別な演技は必要ないでしょう。それでも構図は少しだけ意識して作り込んでみましょう。たとえばママが普通に赤ちゃんを抱っこした状態で近寄った写真を撮ると、どうしてもママと赤ちゃんの顔が離れて見えることがあります。そういうときは意識して赤ちゃんの顔にママの方から顔を近づけてください。その状態を撮る側のパパは、上から下から右から左からと、周囲をぐるっと回りながら撮り続けましょう。もちろん撮るときは優しく声をかけながら……。こうして撮ると、写真に撮られるのが馴れていない人でも、緊張がとけて優しい表情になるものです。

 
▼写真16 パパの抱っこシーンもしっかり押さえましょう
赤ちゃんの表情をメインにしたり、2人の表情を収めたりする以外に、赤ちゃんを見つめるお父さんの表情をメインにして撮ってみましょう。成長したお子さんにとって大切な思い出になるはずです

 

■ 家族写真の心構え

家族写真は未来の家族のために撮って残すもの。写すべきものは撮影時の「 心 」だと言ってもいいでしょう。悲しい心を残したいとは誰もが思いません。その時代時代の楽しく幸せな気持ちを写真に残しましょう。そのためにも、撮影時の雰囲気作りはとても大切です。特に赤ちゃんと一緒に撮るときは、ご両親の気持ちが赤ちゃんに反映されることを忘れてはいけません。赤ちゃんの笑顔を撮りたければ、無理に笑わせようとはせず、まずはご両親が楽しい気持ちで笑って撮影し始めましょう。赤ちゃんはその雰囲気を感じ取ってくれるはずです。

著者:薮田 織也( Oliya T. Yabuta )

■ 人物・光景写真家 ■  1961 年生まれ。テレビ番組制作会社、コンピュータ周辺機器メーカーの製品企画と広告制作担当を経て、1995 年独立、人物写真家に。2000 年よりモデルプロダクションの経営に参画し、モデル初心者へのポージング指導をしながらポージングの研究を始める。2008 年「モテ写: キレイに見せるポージング」を共著で上梓。2003年か らStudioGraphics on the Web の創設メンバーとして活動。近著に「 美しいポートレートを撮るためのポージングの教科書 」( MdN 刊 )、監修書籍に「 ちょっとしたコツで10倍かわいく見える モテ[写]の教科書。」(MdN 刊)がある。公益社団法人 日本広告写真家協会 正会員

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